二階堂瑠美、姉妹Mリーガー誕生「新加入の役割と覚悟」(31)

 19歳で日本プロ麻雀連盟にプロ入りした2000年以降、姉妹プロ雀士として各メディアに注目され続け、その生き様は漫画化、映画化もされている二階堂姉妹。Mリーグ2020で優勝を飾った妹の二階堂亜樹プロが所属するEX風林火山に、姉の二階堂瑠美プロがドラフト指名され、姉妹Mリーガーが誕生した。20年以上、女流プロ界を牽引してきた瑠美プロが、Mリーガーとなって思うこととは?

亜樹プロとチームメイトになってから、お互いに意識の変化はありましたか?

「同じチームになったからといって、今までと何も変わってはいないですね。亜樹ちゃんからも頑張ってねとか頑張ろうねと言った言葉があったわけでもなく普段通りです(笑)。欲を言えば、亜樹ちゃんにはもうちょっと自分をいたわってほしいなという思いがあるだけですね。すごく頑張りすぎるところがあるので」

「振り返れば10代でプロ入りした頃は正直、亜樹ちゃんが元気でさえいてくれたらいいなという思いだけでした。亜樹ちゃんが楽しんでやっているものなら一緒にやろうという感覚だったので、麻雀もそうですが、私自身それまでやったことがなかったパチンコとスロットも始めたらハマったという感じでした。ビリヤードや卓球はハマらなかったんですが」

麻雀を始めたのはいつ頃ですか?

「実家が雀荘だったんですが、やったことはありませんでした。やってみたいなと思ったのは18歳の頃、亜樹ちゃんが働いていた安藤満プロ(享年55)の麻雀店でウエイトレスとして働き始めてからです」

連覇を狙うチームにおける自身の役割はどう捉えていますか?

「私は個人最高スコア部門の獲得を目標に掲げています。ある程度リード出来ている状態だったら自由に打てるので、ツイいる時にしかできませんが、打点を上げていきたいですね。とりあえず出場2戦目で最初のトップは取れたので、今後はチャンスがあれば、トップだったらいいやではなく、最高スコアを伸ばしていきたいと考えています」

母でもある瑠美プロ。「娘に麻雀やってみたいと言われたら、やらせてみます。ただ結構飽きっぽくて(笑)」

華麗な手役派と目されていますが、影響を受けた師は?

「麻雀プロとしてのあり方を教えてくれたミスター麻雀こと小島武夫先生(享年82)の影響は大きいと思います。小島先生は手役派というイメージが先行していますが、読みの精度もものすごく高く、守備力もすごい。でもファンの前ではもちろん、私たち姉妹の前でも麻雀の細かい打ち方に関して話をすることは一度もありませんでした。先生が言うことは麻雀は勝ったり負けたり。魅せる麻雀。プロとして人が見ていて喜ぶ麻雀を打つといったように、誰にでもわかりやすい言葉。KONAMI麻雀格闘倶楽部のイベント等で、小島先生のプロとしてあり方を間近で見られたことは、私にとっては本当に得難い経験であり、宝です。この財産は後輩とも共有し、後世に残していきたいなとは思っています」

Mリーグはチーム戦。個人戦との違いはありましたか?

「Mリーグ開幕以降、プロクイーン(※)の決勝戦があったんですけど、個人戦で戦うのがこんなに楽なのかという感覚がありました。勝っても負けても自分だけの結果であり、責任なので」
※プロクイーン=日本プロ麻雀連盟が主催する団体の枠を超えて女子プロNo.1を決定するタイトル戦

「対してMリーグは、オーナー会社、スポンサー、チームスタッフと多くの人が関わっているので責任感があります。だからこそ個人戦以上に嬉しいことは倍以上になるし、悲しいこともみんなで共有して分け合える。チームメイトは友達というより、運命共同体みたいな感じ。チーム戦ならではの打ち方を模索している最中ですが、お互いがお互いの支えになれるような信頼関係を構築していきたいですね」

Mリーグでは、EX風林火山のサポーターから選手全員に贈られたネーム入りシューズを履いて対局している

Mリーグで表現したいことはありますか?

「これから麻雀を始めてくれるであろうすべての人に、麻雀ってこんな感じなんだよとわかりやすく言語化して伝えられたらいいなと思っています。小島先生の言うように、麻雀は勝ったり負けたりなんですが、負けたらつまらないと言う人もいます。でも負けている時でも、やれることはいっぱいあるし、学べることもたくさんある。ただ私の打ち方は、他の人とはかなり乖離があると言われがちなので、わかりやすく言語化して伝えるのは難しいんですが(笑)」

[難しい局面ではできるだけ眉間にシワを寄せず、それ以外の部分で困ったなということを表せたらとは思っています」と対局中に七変化する表情も魅力のひとつ ©ABEMA

麻雀で磨かれたことはありますか?

「麻雀を通じて視野が広がりました。私は麻雀を探検、探索、挑戦というイメージで捉えているんですが、自身の選択肢だけでも可能性がたくさんある上、いろんな人がいるので、いろんな打ち方もあり、自分と異なることはいくらでもあると知ることもできます。考え方の幅が広がることで、気持ちにゆとりも生まれていくので、実生活にも応用できる部分はものすごくあると感じています」

妹の亜樹プロと一緒に配信しているYouTubeチャンネル「るみあきChanねる」では、Mリーグをはじめ、麻雀にまつわる様々なトピックを取り上げている

女流プロ界を牽引してきた瑠美プロから、麻雀プロを目指す方にメッセージを

「これから目指す方なら、スマートフォンなどで、自分の麻雀を撮影するのを習慣にしていくと、自身を客観的に見られるのでお勧めです」

「昨今、SNS等による打牌批判で凹んでいるプロ仲間や後輩は数多くいます。でも絶対努力しているんだからそんなに凹まなくてもいいよねと思ったりすることも多々あります。私は打牌に関する否定的な意見は全く興味はありません。メンタルが強いとよく言われるんですけど、私が考えられうる可能性より選択肢が多く、具体的な根拠を見せてくれるのであれば聞く耳はあるんですが、例えばその一巡だけ、一局だけに関する表面的なことを言われても気になりません。なぜなら次局もあるしオーラスもあるし、リーグ戦なら最終日もあるしと言った具合に、麻雀プロ人生は延々と続いていくものだからです」

「そして何より一番必要なのは覚悟だと思います。麻雀に対して真摯に向き合う覚悟さえあれば、たとえ結果が出ていなくても、それはその人の麻雀を充実させていくための努力の過程であり、終わりではない。麻雀プロとしてどう終わりたいのか。ゴールというか目標とする理想像をまず最初に考えておけば、そうなるためにはどうすればいいのかが見えてきます。理想像に近づこうとする覚悟さえあれば、たとえ叩かれても気にならなくなるはずです。常に選択を求められるゲームであり、選択を精査し、最終的に決断をするのは他人ではなく自分なので」

 

二階堂瑠美(にかいどう・るみ)プロフィール

生年月日:1980年9月27日 
出身地:神奈川県鎌倉市 
血液型:A型
所属:日本プロ麻雀連盟
キャッチフレーズ:天衣無縫
勝負メシ:焼肉(ハラミとレバー)
趣味:読書
主な獲得タイトル:麻雀最強戦第17期プロ最強位、第1期夕刊フジ杯、第11、19期プロクイーン他多数
著書:「二階堂姉妹の麻雀入門(日本文芸社)」「明日は、今日より強くなる(KADOKAWA)」

二階堂瑠美 年表
年齢 主な出来事
1980 1歳 神奈川県鎌倉市に生まれる
1992 12歳 小学校では球技部。中学ではバスケ部に所属
1998 18歳 安藤満プロの麻雀店で働き始める
2000 19歳 日本プロ麻雀連盟16期生としてプロ入り
2004 24歳 第1回チャレンジカップ 優勝
2005 25歳 第3回麻雀さんクイーンカップ 優勝
2006 26歳 麻雀最強戦第17期プロ最強位 優勝
第4回天空麻雀女性大会 優勝
2007 27歳 第1期夕刊フジ杯 優勝
第33回チャレンジカップ 優勝
2009 29歳 第7回天空麻雀女性大会 優勝
2010 30歳 第8回天空麻雀女性大会 優勝
2011 31歳 第12回ロン2リアル麻雀大会 優勝
2013 33歳 第11期プロクイーン 優勝
2021 41歳 EX風林火山からドラフト指名を受ける
第19期プロクイーン 優勝

 

◎写真:佐田静香(麻雀ウォッチ) 、インタビュー構成:福山純生(雀聖アワー)